Risk and Chance 2003 5 2
リスクを恐れてはいけない。
リスクのない者にはチャンスもない。
今は昔、ある村に男が住んでいた。
寒い晩のこと、戸をたたく音が聞こえた。
男は、こんな遅い時間に誰がきたのかと思いながら、戸を開けてみると、
そこには、若い女性が立っていた。
長い旅をしてきたのか、身なりは、ボロボロであったが、限りなく美しかった。
そこで男は、こんな夜遅い時間になぜ、という不審に思う心より、
長旅で疲れている美女を自分のものにしたいという気持ちの方が勝った。
男が、美女を自分の家に招き入れようとすると、美女はこういった。
私には双子の妹がいるのです。二人とも泊めてくださいと言った。
男はさらにうれしくなった。
こんな美人の妹となれば、さらに美しいだろうと思った。
ところが、男は、その妹を見て、急に寒気がした。
表情が冷たく、目はつり上がり、口は裂けていた。
まるで物語に出てきた悪魔の使いのようだった。
そこで、男は、妹の方は泊めないと言った。
しかし、美しい姉の方は、涙を流しながら、こう言った。
妹を泊めてくれないならば、私も泊まりません。
妹と私は、うれしい時も悲しい時も、幸福と不幸を共有してきたのです。
身も心もひとつなのです。
男は、永遠に悩むことになった。
そして夜は明けていき、双子の姉妹は去っていった。
リスクとチャンスは、別人のように思えて、しかし同一人物である。